以下の記事は、JICAバヌアツ駐在員事務所ホームページの「トピックス&イベント情報」に掲載されていた内容を転載したものです。(内容は同一ですが、体裁が一部異なります)

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◆ 日本の経験をバヌアツの発展のために-管理職向け品質管理セミナー
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2005年3月31日、首都ポートビラのホテルの会議室で、バヌアツ商工会議所主催の管理職向けエグゼクティブ・フォーラム、「ビジネスマネジメントにおける品質管理」が開催されました。このセミナーの講師は白鳥貞夫シニアボランティア(SV)。昨年11月から、経営管理という職種で、商工会議所が主催する様々なビジネス研修の運営や内容に関するアドバイスをしています。

白鳥SVは民間の電子機器メーカーで40年間働き、後半の20年間は日本とアメリカで管理職として事業運営(経営)にあたってきました。就職した最初の職場でアメリカ式品質管理(QC)に出会い、その後日本型の品質管理が発展する中で、QCサークルのリーダーを務めたり、海外の現地生産にかかわったり、数年前には小集団活動の全国研究会で講演するなど、品質管理とは長いつきあいと実務経験に根ざした深い造詣があります。今回のセミナーは、日本の品質管理の歴史と経験を、バヌアツのビジネス経営者・管理者に学んでもらう事を目的として開かれました。

セミナー第1部の白鳥SVの講義は約90分間。アメリカで生まれたQCが戦後日本に持ち込まれ、それがどのように日本型QCとして発展したか、日本の戦後経済を牽引した輸出産業の中で、日本イコール品質という評価を得るためにどのような努力がなされたかという歴史的な流れから、ビジネスにおける「品質」「管理」とは何か、現場の管理ツールとしての「QC」の有効性、QC 活動で使われるツールの紹介、さらには、QCがバヌアツの環境の中で如何に使えるかという提言まで多岐に渡りました。第2部の質疑応答では、義務教育(6年)修了者が多いバヌアツ人の能力開発にQCが役立つのではないかという指摘や、民間だけでなく政府省庁の管理職がこの講義を聞くべきだと言うコメントもありました。

人口20万人の太平洋の小国バヌアツは25年前に独立を果たしましたが、経済的な自立はまだまだです。国内の道路や電気、水などの基本的インフラストラクチャーも整備できていません。農業、漁業を中心とする第一次産業と観光が主要な産業で、多くの人が自給自足に近い生活を送っています。天然資源に乏しいこの国が外貨を獲得するためには、粗放な段階の農林業、牧畜や漁業の製品を工業化し、国際的に通用する商品を作り出してゆく努力が必要です。

白鳥SVのエグセクティブ・フォーラム「品質管理シリーズ」は、今回を含めて3回予定されています。次回以降は、QC活動を進めてゆく上でのツール類の研修や、経営品質の改善活動などを紹介してゆく予定です。また、今回のセミナーの評判を聞いたある政府組織からは、出張セミナーの要請も来ています。

日本型の企業経営は海外では通用しないとよく言われますが、日本の国際競争力を底辺から支えたQC活動は、「KAIZEN」という英語にもなった国際的に通用する管理手法です。バヌアツでも途上国のビジネスの質を底辺から向上させるための分かりやすい管理手法としてQC活動が普及し、経済発展に貢献することを期待したいと思います。