バヌアツの台湾承認問題につき、何人かの方から「いったいどうなってるんだ」というご質問をいただきました。ボランテイアは政治にはアンタッチャブルですが、現地の週刊新聞から事実関係を抜粋します(新聞報道が必ずしも真実を伝えきれないことは、どこの国でも同様、というご認識の上でお読みください)。
- バヌアツは1980年の独立以来「一つの中国」政策を堅持してきた。
- 04年7月に新政権が成立、9月にVohor新首相が北京を訪問、両国の協力関係継続を確認した。
- 04年11月3日、台湾政権はVohor首相との間で外交関係樹立のコミュニケが調印されたと発表。台湾代表が宿泊するポートビラ市内のホテルに台湾旗が掲揚されたのに対し、中国大使館が抗議。旗が何度も上がったり下がったりした。
- 11月4日、首相所属政党を含む各党が中国大使館宛に「一つの中国堅持」確認のファクスを送る。
- 11月8日、Vohor首相帰国、サント島の自宅に引きこもる。(首相は健康診断の私的外遊の途中で訪台)
- 11月10日、首相欠席のまま閣議開催、台湾とのコミュニケ無効を決議。
- 11月15日、首相が外務大臣を更迭。首相は同日のテレビ会見で中国・台湾の和解を要望。
- 11月18日、中国はコミュニケ破棄まで全ての援助を留保する旨を通告。
- 11月25日、最大援助国のオーストラリアは、バヌアツ政府が「昨今の怠惰・腐敗」を是正しない限り、援助を撤回する旨を通告。(台湾問題とは関係しないかたちで報道された。)
- 11月末から内閣不信任案の審議が始まったが、憲法や議会法の解釈、首相の外交権限等を巡って最高裁で争う政治的攻防が続き、国会は12月10日まで空転。
- 左の写真は「孤独な首相」と題されてIndependent紙の一面を飾ったが、首相寄りといわれる議長職権で、同紙は議場内への立ち入りを禁止された。
- 12月13日、内閣不信任案がようやく成立、新首相には前副首相のLini氏が就任。同氏は1980年に独立した際の初代首相Lini氏の実弟。閣僚の大部分はたらい回し的に閣内に留まったが、依然として9党連立の内閣であり、安定政権とは言えない。
- 同13日、中国は本年春のサイクロンで被害を受けた学校の復旧工事への緊急援助として2百万ドルを提供。右の写真は贈呈式の様子。(前列左中国大使、中央外相、右新首相。外相右後の蔵相は唯一の白人閣僚)
また、オーストラリア外相が急遽旅程を変更してバヌアツを訪問、両国の協力関係を再確認し、援助の再開を約した。
これにて一件落着、メデタシメデタシ。
一方、新内閣の移民担当大臣の指示により、帰国しようとしていた台湾代表が空港で身柄を一時拘束された。一部議員に贈賄が行われたという噂があり、その調査を理由としたものだが、行き過ぎとして批判を浴びた。
議場で一人たたずむ前首相 |
中国大使から2百万ドルの小切手贈呈 |