バヌアツには人が住んでいる島が69ある。最南端のアナイチョム島は独特の植生や透明な海が魅力と聞いていたが、週2便の定期便では3泊4日の旅程になり、気軽に遊びに行けない。それなら小型機をチャーターして日帰りで行こうと言い出した人達がいて、小生も仲間に入れてもらった。

アナイチョムは香港の緯度とほぼ同じ南緯20度に位置する。19世紀半ばに白檀(Sandalwood)の伐採で賑わい、ヨーロッパ人の商人も多数居住したが、すぐに採り尽されてしまった。その後も捕鯨基地として利用されたが、19世紀末には疫病で12千人の人口が250人まで激減したこともあり、原始を留める離島のひとつに戻った。現在の人口は約1,000人で、松材の植林と観光が主産業である。我々が訪れた日も沖あいに大型クルーズ船が停泊し、白砂の浜はオーストラリア人観光客で賑わっていた。

アナイチョム本島は標高852mのアタハイム火山の急斜面が海に落ち込む地形で、数百mの滑走路を作る平地もない。集落から500mほど沖あいの「ミステリー島」に草地の滑走路と白砂の遠浅ビーチがあり、観光客が本島を訪れることは少ないようだ。我々はボートで本島に渡り集落を見せてもらったが、現金収入も寄与しているのだろうが、この国の水準から見て小ぎれいな印象を受けた。約15年前に当地でマラリア撲滅に貢献した日本人医師、金子博士の施設もきれいに保存されていた。

バヌアツでは、離島旅行は文字通り天候に左右される。雨が降ると飛行機の離着陸が出来ないからである。ボランテイアでも離島の医療などに関わっている人達は、天候が変わって1週間以上も足止めを食らうことがしばしばあり、予定通りには仕事が進まないという。 空港が半日閉鎖されただけで大騒ぎになる日本などとは別世界である。我々が訪れた日曜日は、朝方までの激しい雨が出発時に上がり、島に到着してしばらくしたら快晴になった。同行9人の中に、余程日ごろの行いの良い人がいたのだろう。

ポートビラから2時間のフライトで、雲間にアナイチョム本島が見えた。 滑走路のあるミステリー島。周囲は白砂の浅瀬で、シュノーケリング初心者にも最適。
我々が借りたアイランダー機。内装はハゲチョロだが快調に飛んでくれた。 アナイチョムの「空港ターミナル」。 
本島のカバ集会所は波浪で倒潰したまま。 小学校。
教会は日曜の礼拝で満杯  保健所の建物。短波通信の無線塔もある 
マラリア撲滅に貢献した金子医師の研究所。 19世紀半ばのヨーロッパ人の宿舎跡
村のたたずまい。 これも村の暮らしの一部
日本と同じ縄跳びのやり方で遊んでいた。 昼前に晴れ上がり、待望の海の色が現れた。
沖あいにオーストラリアからの観光船が停泊、 クルーズ客も海水浴を楽しむ
ここでもバヌアツ式ストリングバンドが歓迎演奏。 同僚親戚のご好意でごちそうになった名物「噛みカバ」。目の前で作ってくれた。
ミステリー島から離陸。 さらばアナイチョム