米国で連邦政府の予算切れによる政府機関の封鎖が続いている。国立公園は連邦政府の直轄なので、封鎖の影響をまともに受ける。第一次トランプ政権下の2018年12月に起きた36日間の政府封鎖では、国立公園が解放状態になりゴミ収拾も行われず、あっという間に荒廃したという。今回は更に長期化する気配で、自然環境への影響も懸念される。ちなみに過去の政府閉鎖は、トランプ政権下を除けば、何れも数日で解決していた。異常な長期化はトランプ政権がいたずらに対立を煽っているためで、これが「偉大な米国を再建する」(MAGA)戦略だと言うのなら、米国は修復不能なまでに壊れるのではないか。この国の新政権はトランプ流を師としないことを切に願う。

それはさておき、イエローストーンはグランドキャニオンやヨセミテに先駆け、1872年に米国で最初の国立公園に指定された。米国屈指の観光名所だが、米国本土の最奥に位置し、近くに大都市がないので飛行機の便が少なく、加えて公園内の宿泊施設が限られて予約が取り難い(これは他の国立公園にも共通)。そんなわけで行きそびれていたが、米国駐在の先が見えた1994年秋、知り合いの旅行代理店に頼み込み、キャンセル待ちで滑り込み、それに合わせて遅い夏季休暇をとった(まだ個人がネットで予約をとれる時代ではなかった)。

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「米国最初の国立公園指定 記念ゲート」

イエローストーン国立公園は鹿児島県に等しい広大な面積を有する。ゲートが東西南北にあり、北門に国立公園指定を記念する石造りの門が立っている。ゲートの外に公園内の宿を取れなかった客を取り込むモーテルが立ち並ぶ風景は、他の国立公園にも共通する。(写真はゲートの内側から撮った)


「オールドフェイスフル・イン」

国立公園のシンボル「オールド・フェイスフル」大噴泉のすぐ近くに、噴泉の名を冠したホテルがある。1902年に建てられた壮大な木造建築で、吹き抜けの大空間が印象的だ。米国の国立公園では園内の宿泊施設は国営で、宿泊料金、レストランの食事や酒類の値段まで国が決めるが、ホテル運営の実務は競争入札で業者に委託されるので、政府封鎖中でもホテルの営業は続けられる筈だが、ゴミ収集や道路の管理は止まったままだろう。イエローストーンは既に冬季休業に入った筈だが、国家公務員であるレンジャーが警備をやめると不心得者が狼藉破壊をする。自然環境保護に無頓着なトランプ政権は気にかけないだろうが…


玄関前の駐車場で野生バイソンがお出迎え

木造本館の内部は吹き抜け天井の大空間

部屋から噴泉群の眺め

暮れなずむオールドフェイスフル・イン

「律儀な爺さん」

イエローストーンに巨大な間欠泉がいくつもあるが、気まぐれでいつ噴くかわからない。この大噴泉は例外で、約90分の間隔で毎回約30トンの熱湯を30mの高さに噴き上げるので「律儀な爺さん」(Old Faithful)の愛称がある。人気第一の観光スポットで、噴泉口を囲んで設けられた見物席はすぐ満席になるので、噴出が終わるとすぐ次の観客が陣取り、90分待つことになる。

写真左端の建物がオールドフェイスフル・インで、その気になれば真夜中に律儀な爺さんの徹夜の仕事ぶりを見ることも可能だが、夜間撮影がムリなフィルムの時代で、小生は惰眠を選んだ。

 


「イン周辺の間欠泉群」

オールドフェイスフル・インの北側(アッパーガイザー地区、ノリス地区)に個性豊かな間欠泉が集まっている。


噴泉を巡る木造の遊歩道。

最大のスチームボート噴泉の噴出に運よく出会った

中規模の噴泉は間隔が短く、待つ甲斐がある。

かわいい噴泉は数分間隔で噴く。


「パンチボウル噴泉」

高く吹き上げない湧出泉は鉱物質が結晶して小さなタワーを形成する。これはフルーツポンチを作る容器を連想させるので、「パンチ・ボウル」の名が付いている。


湖畔で魚を茹でる鍋は「フィッシング・コーン」

この個性的なミニタワーは無名

「マンモスの段々温泉」

斜面を流れる湧出泉の成分が段丘を作ることがある。ノースゲートに近いマンモス・ホットスプリングスの段丘は、手を入れるとちょうどよい湯加減だったが、もちろん入浴は許されない(公園内に「温泉施設」は無い)。


「朝顔型湧出泉」

平地に湧き出た鉱物質の少ない温泉水はそのまま川に流れ出る。この湧出泉はその形から「朝顔」(Morning Glory)と名付けられた。90℃を超える熱湯で、高温を好むバクテリアが周辺に彩りを添える。周辺の更に大きなプールも熱湯をたたえている。




「イエローストーンのいわれ」

公園中央部の「キャニオン」(渓谷)地区に、急流に削られた断崖がある。公園名の「イエローストーン」はこの岩の色に由来する。渓谷出口の「Lower Falls」は、落ち口の展望台まで行ける。




「野生を楽しむ」

イエローストーンは野生動物の宝庫で、バイソンや大鹿の群れが悠々と暮らし、絶滅を懸念された狼の群れも蘇ったという。公園内では狩猟はもちろん禁止だが、釣りは入漁料を払えばOK。



「また来いよ、と言われたが…」

1994年9月の1週間の旅では「イエローストーン国立公園」の他に、北に連なる「グレイシャー国立公園」と、南に連なる「グランドティトン国立公園」(映画「シェーン」の舞台)も走りまわった。当時の日本人らしいせわしない旅程で、壮大な自然の中に身を置いて心に刻む旅ではなかった。最終日に公園の出口でこの景色に出会った。「また来いよ」と言われたような気がしたが、その機会がないままになりそうだ。